2月、東京に記録的な大雪が降った日、同居していたお義父さんが亡くなった。
呆然としながらも、ただ子供の世話と家事をこなしたひと月。
家には、まだお義父さんの気配がある。
一生懸命コツコツと、毎日を積み上げるように生きた人だった。
幼い頃に父親を亡くし、激動の時代をシングルで生き抜いた母親を持つ。
父を知らないはずなのに、理想的な父で居てくれた人。
陰になり日向になり、私たちを支えてくれた。
亡くなる寸前まで、いつもと変わらずに生活していた。
体調は最悪な中、普段どおりに過ごすのは、すごく大変だったろうと思う。
家の階段の上り下りだって、エベレスト登山くらいの負担はあったんじゃないのか。
家族を心配させないように、面倒をかけないように、意地を張るように頑張っていた。
嫁である私には、最期まで甘えることはなかった。
これから少しずつ手足になれるかと思っていたのに、さっさと逝ってしまって。
水臭い。
遺品整理はつらい。
場所もないので仕方なく、不要なものはどんどん処分してるけど、実際捨てるのはつらい。
お義父さんが、大切にとっておいた思い出の品。洋服、写真、本、手紙。
宝物を捨ててしまうと、長くて重いお義父さんの人生も、空に雲散してしまうような気がする。
根気よく積み上げてきたひとつの人生が、死とともに消滅してしまうような虚無感。
本当にこれでいいんだろうか。